Classiques japonais avec furigana
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かいじょうのみち
海上の道
柳田 国男
Lisez 海上の道 (かいじょうのみち) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 182 344 caractères · 353 écrans
三
三
二十年も前に、私は一時熱心に風の名の集録を心がけたことがある。農民も決して風に無関心ではないが、その呼称の多くは海の生活からの感化を受けている。海ではそれぞれの風の性質が、風の名となっているのだが、内陸では専ら方角を問題にするが故に、それを地方的に意味を限定して使い、従って到る処少しずつ内容の差が生じている。たとえばヤマセは山の方から吹いてくる風である。それ故に江差松前では今もって東北風がヤマゼであり、瀬戸内海の北岸では、四国の方からくる南風をそういう処もある。『万葉集』の末二巻の中には、アユノカゼに東風の二字を宛てたものが有名であるので、多くの国語辞典にはこの語を東風と註し、それを他の方角の風とするものを方言と見下すらしいが、この漢字の使用こそは、越中文人の居住地が、ちょうど西隅に偏していたことを意味するもので、現に今日でも富山県の海岸では、方角によって能登アイと、宮崎アイとの二つのアイの風がある。宮崎はすなわち東端越後境の海角であって、是から吹きつける風のみが大伴家持らの袂を翻えし、能登から吹くアイは山に遮られて、この辺りでは心づかれなかったので、まだこの頃までは漢字の利用が、その場かぎりの思いつきだったことが是でよく判る。