Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

Lisez 石狩川 (いしかりがわ) de 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 253 535 caractères · 506 écrans

Aozora Bunko

松の葉が散って来るのだ。黒い濠の空気がひやりと来た。濠を越えるとやがて武家屋敷であった。

彼は歩をゆるめて、ふりかえって云った。

「お呼び立てして相済みませぬ」

「いや、いや」

「ちと、折入ってお願いいたしたいことがございまして」

「おぬしの住居にまいれと云うわけか」

「勝手ながら――」

「まアよいさ、屋敷があるならば、こちらが招かねばならぬものかも知れん、のう?」

阿賀妻はそう云ってすっとその前を通りぬけた。肩先で切った黒い風が、むっとする酒の臭いをふくんで吉原の顔にぶっつかった。すると、彼は薙ぎはらわれたようにくら闇のなかで首を外らしていた。

「おそれ入ります」

「はは、馴れてるよ」と阿賀妻は前を歩きながら云った。

「はア?――」

「それに何だ――今じゃア家老とか藩士とかいう隔てもないわけだ、同じくみんな朋輩だ、ここらあたりか」

彼は立ちどまった。ぴりっと勘にひびくものがあった。

吉原兵太郎は駈けだして行った。門が内から開いた。格子戸を洩れる燈火がちらっと遮られた。黒い大きなかげがよぎったのだ。

阿賀妻はくすんと鼻を鳴らした。

がらりと格子戸が開けられた。あんどんの灯が足もとににぶく流れて来た。