Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

Lisez 石狩川 (いしかりがわ) de 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 253 535 caractères · 506 écrans

Aozora Bunko

目と鼻がきゅンと痛んだ。涙と水ぱなが流れだした。そして、むかむか腹立たしくなった。もくもく燻っている焚き木に怒りがぶっつかって行った。雪のついた沓の先でそれを蹂りつけた。

弟妹たちはじりじりと後にさがった。ときどき爆発する長兄のそういう怒りには、捉えどころが無かった。遠のいて眺めていた。

むろん高倉祐吉自身でも、燃えない炉火がその原因だとは思っていない。閉じこめられた永い冬の、陰気で単調なその日その日が、暗い小星にはいると、まことに際限なくつづくような気がする。焦燥であった。立っても坐ってもいられない、何かこう――生理的な悩ましさでさえあった。自分の身体をやぶって、赤い血をどくどく放出したら少しは気が楽になるかも知れぬ――そういうもだもだしたものであった。

その上、それと気づいて耳まで赤くなるのだが、誰にも見せない彼の胸のうちでは、あの忌々しさが煮えくりかえっていた。あのひとに子が生れるのだ。汚らわしい。長い睫毛の下にぱっちり開いた彼女の黒い瞳が、いつの間にかすっかり落ちくぼんでしまい、眼はにごり、瞼は黝んだ。痛ましく痩せた頬にいつも独りだけの微笑を湛えて、もはや彼にはほほえまなくなった。