Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Lisez 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 26 416 caractères · 53 écrans

Aozora Bunko

十

――それからのあたしは、本当のあたしじゃあなく、べつの人間になったような気持でした。

本当の自分は佐八のところにいる、ここにいるのは自分とは違う人間だ、おなかはそう思った。事実、それからは腑抜けにでもなったようで、親の云うままにその男と夫婦になり、本所のほうで世帯をもった。

十

それから二年、太吉という子供も生れて、その男との生活も、それなりにおちついて来たと思ったとき、浅草寺で佐八と出会った。

おなかは眼がさめたように思ったという。長いこと眠っていて、そのときふっと眼がさめたような気持だった。神隠しにあった者がひょいと自分の家へ帰った、とでもいうような気持で、火事からあとのことは、現実のものではないように感じられてきた。

――いまでもそうなの、いまこうして話しているのがあたしだということはわかるけれど、ほかに良人や子供を持った自分がいるとは、どうしても考えられないのよ。

そう云っておなかは身もだえをした。

――あたしそれで、あなたのところへ帰って来たの、わかってくれるわね、あなた、あたし帰って来たのよ。

――それは本気で云うのか。

――抱いてちょうだい。