Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 142 597 caractères · 289 écrans
「あッ、これはひどい、――何という虐たらしい事をしたんだ」
平次が言ったのも無理はありません。
月の光に蒼ずんだお政の死に顔は、全く思ってもみない痛々しいものだったのです。
なにぶんにも凄まじい血です。
晴着らしい単衣の胸から腰まで蘇芳を浴びたようになって、左顎の下へ、斜めに開いた瘡口は、それほど大きいものではありませんが、漸く脂の乗って来た豊満な大年増の顔は、蝋のように蒼ざめて、月の光と、提灯のあかりの中に、言いようもない不思議なニュアンスを醸し出しております。
美女の死体の凄まじさに、平次もさすがに躊躇いましたが、しばらくすると、番太の提灯をガラッ八に差出させ、馴れた順序で、髪形から、着物の崩れ、手足の投げ出された方向から、血の流れよう、傷口の模様まで、恐ろしく念入りに調べ始めました。
「八、何か掴んでいるようだ。左の手を開けてみな」
「ヘエ――」
八五郎はお政の死体の冷たい掌を開けました。
「ありましたよ、親分」
「何だ」
「毛」
「どれどれ」
ガラッ八のつまみ上げたのを見ると、紛れもなくそれは、女の髪の毛です。懐紙を出して、その上へ置くと、長短不揃いなのが三本、いずれも少し赤くて、縮れているのがはっきり判ります。