Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Lisez 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 114 139 caractères · 233 écrans

Aozora Bunko

泥棒でなし、怨みでなしとすると」

ガラッ八がこんな分りきった掛合いをしている間、平次は部屋の中を念入りに調べておりました。

「番頭さん、こりゃ何だえ」

手に取ったのは、素木に彫った普賢菩薩像、台から仏体まで、せいぜい一尺二三寸もあるでしょうか。毛ほどの顔料も用いない、全くのうぶな檜材ですが、少し荒いタッチで、鑿の跡が匂うばかり。慈眼を垂れた菩薩の顔は、少し離して眺めると、三十二相ことごとく具備して、めでたくも気高き限りです、肩から胸へ流れる線の清らかさ。腰から膝へ、象の背へと移る起伏の優麗さ、あまりの見事さに平次も思わず感歎の声をあげました。

「それは一向に存じません」

番頭の久助は眼を擦ります。

「知らない?」

「ヘエ、一向に見かけたことのない御仏像でございます」

「この部屋には、不思議に仏像がない。廊下にも庭にも、あの通り幾百体となく仏像をならべて置くのに、この部屋には、床の間にこれが一体だけおいてあったのを、番頭さんは気が付かなかったというのか」

平次は重大な鍵を掴んだ様子です。

「ヘエ。――昨夜までそこに置いたのは、極彩色の普賢菩薩様でございました」