Classiques japonais avec furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lisez 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 271 caractères · 263 écrans
「これがあれば大丈夫だ。」
彼等は再び窟に入って、畚を卸す準備に取懸った。畚を吊るには彼の毛綱が必要である。大勢が手を揃えて其綱を繰上げると、綱の端には尠からず重量を感じたので、不審ながら兎も角も中途まで引揚げると、松明の火は漸く達いた。洋服姿の市郎は胴を縛られたままで、さながら縁日で売る亀の子のように、宙に吊られつつ揚って来たのである。人々も驚いて声を揚げた。
「や、小旦那だ……。角川の小旦那だ……。早く引揚げろ。」
市郎は恙なく引揚げられた。が、彼は正体も無く其処に倒れて横わったので、騒ぎは愈よ大きくなった。一隊の中でも足の達者な一人は、麓まで医師を迎えに走った。斯うなると、巡査の身の上も益々不安である。権次という若者を乗せた畚は直ちに卸された。
畚が中途まで下って来た時、暗い岩穴の奥から一個の怪しい者が現われた。彼は刃物を振翳して、綱を切って落そうと試みたが、綱は案外に強いので、容易に刃が立なかった。而も権次が無闇に振廻す松明の火に恐れて、彼は忽ち逃げ去った。畚は滞りなく底に着いた。
塚田巡査は先刻から待侘びていたらしい、暗い中から慌しく進み寄って、先ず其の無事を祝した。