Classiques japonais avec furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lisez 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 271 caractères · 263 écrans
」
「蘇生ったか。」
「大丈夫だとお医師が受合った。何しろ、早く上って来い。」
「おお。」
上と下とて遥かに呼び合っていたが、何を云うにも屏風のような峭立の懸崖幾丈、下では徒爾に瞰上げるばかりで、攀登るべき足代も無いには困った。其中に、上では気が注いたらしい。
「待て、待て。畚を持って来るぞ。」
斯う云って権次は立去った。下の人々は唯ある大岩に腰を卸して、先ずほッと一息吐いた。其間も巡査は油断が無い、川に沿うて往きつ戻りつ、ここらの地形を案じていた。
この川は人跡絶えたる山奥から湧いて来るのであろう、凄じい勢いで滔々と流れ落ちている。其の支流は虎ヶ窟の下を潜っているらしい。窟の底で絶えず轟々たる響を聞くのは之が為であろう。近く聞けば水の響は、実に耳を聾するばかりであった。
其の水音に消されて、今までは誰も聞付けなかったが、何処やらで微な唸声が聞えるようである。巡査は忽ちに耳を欹てた。そこか此処かと声する方を辿って行くと、彌が上にも生い茂れる熊笹や歯朶の奥に於て、確に人の呻くを聞いた。そこらの枝や葉は散々に踏躪られて、紅い山椿の蕾が二三輪落ちていた。
巡査は進んで熊笹を掻分けると、年の頃は五十ばかりの坑夫体の男が、喉を突かれて倒れていた。