Classiques japonais avec furigana
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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Lisez 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 271 caractères · 263 écrans
彼児は正直者ですから、他から嫌疑を受けて家捜しをされたなどと聞くと、必然憤るに相違ありませんから……。」
「可、可。判った。」
お杉が照す蝋燭の淡い光を便宜に、市郎は暗い窟の奥へ七八間ほど進み入ると、第一の石門が眼の前に立っていた。市郎はお杉の手から燈火を受取って、左右の隅々を照し視たが、上も下も右も左も唯一面の嶮しい岩石で、片隅の低い岩の上には母子の寝道具かと思われる獣の生皮二三枚と、茶碗と箸と薬鑵のたぐいが少しばかり転がっているのみで、他には別に眼に入る物もなかった。市郎は念の為に獣の皮を一枚づつ引き剥って見た。
「何か見付りましたか。」と、お杉は冷笑うような口吻で問うたが、市郎は何とも答えなかった。これより更に奥深く進むと、第二の黒い石門が扉のように行手を塞いでいて、四辺の空気は凍るばかりに寒かった。
「この先にも路があるかね。」
「ありますから、まあ入って御覧なさい。石の下から潜って行くんですよ。」
市郎は一旦立止ったが、此のまま半途で引返しては何にもならぬ。彼は障碍物競走をするような形で、兎も角も冷い石門の下を這って通ると、其後からお杉の痩せた身体が蛇のようにするすると抜け出して来た。