Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 261 216 caractères · 521 écrans
「ご苦労だった」
と、徳島の同心浅間丈太郎と田宮善助が、火事を消したように一同をねぎらった。
海部側の安井、土岐の二同心も、自分たちが、手を下すにいたらなかったことを同慶しあって、
「眼八、さすがに、鮮やかだな」
と、ほめた。
「オイ、そっちの奴も曳き出してこい」
助同心の岡村勘解由が、口へ手をかざして向うへどなると、
「おっ」と、さっきのひとりが預けられた縄付きの源次を曳いてくる。
「引きあげましょうか」
と同心連中、涼しい顔で、月明りの顔を見あった。そして、源次と大勘、ふたりの縄付きを引っ立てて、意気揚々と、前の裏道――女坂のほうへ向って行く。
わざと、正面の参詣道を避けたのは、医王山薬師如来の霊地を意識するおそれであった。かれらも、不浄役人ということを、気づかずに自認している。
「暗いな」
「こう廻るのが近道なのだ」
そういったほど、喬木の厚ぼったい茂りが、一同の上をふさいできた。みんなわらじばきなので、シト、シト、シト……と揃う跫音が言葉のない間を静かにつなぐ。
ドウーッと、滝の落ちるような音の奥から、寒いような嵐気が樹々の眠りをさましてくる。大勘は時折、ものいいたげに源次のほうを見た。