Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lisez 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 296 741 caractères · 584 écrans
「あの発汗を見ると、たぶんピロカルピンの中毒だろうよ」と暫時こまねいていた腕を解いて、法水は検事を見た。が、その顔には、まざまざと恐怖の色が泛んでいた。「とにかく、あの女が、地精の札を僕等が発見したのを、知る気遣いはないのだから、勿論自殺の目的で嚥んだのではない。いや、たしかに嚥まされたんだよ。それも、けっして殺すつもりではなく、あの迷濛状態を僕等の心理に向けて、伸子に三度目の不運をもたらそうとしたに違いないのだ。ねえ支倉君、それが三段論法の前提となるのも知らずに、あるものを非論理的だと断ずることは出来まい。すると、伸子とピロカルピン――つまりその前提としてだ。まず、壁を抜き床を透かしてまで、僕等の帷幕の内容を知り得る方法がなけりゃならん訳だ。ああ、実に恐ろしいことじゃないか。先刻この室で交した会話が、ファウスト博士には既に筒抜けなんだぜ」
事実まったく、この事件の犯人には、仮象を実在に強制する、不可思議な力があるのかもしれない。熊城は、もはや我慢がならないように息を呑んだが、
「しかし、今日の伸子には、感謝してもいいだろうと思うよ。実は、先刻僕の部下が、伸子の室を捜っている間に、あの女は、クリヴォフの室でお茶を飲んでいたのだ。