Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

Lisez 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 296 741 caractères · 584 écrans

Aozora Bunko

当然それには、鐘鳴器に並んでいる鍵盤の列が、その印象に背景をなしていると思われた。それから、続いてダンネベルグ夫人の名を、丁抹国旗(Danebrog)と云い損ったのだが、それには明らさまに、武具室の全貌が現われているのだ。と云うのは、あの時伸子は、前庭の樹皮亭の中にいて、レヴェズの作った虹の濛気が、窓から入り込んでゆくのを、眺めていた。ところが、あの樹皮亭の内枠には、様々な詩文が刻み込まれていて、その中にフィッツナーのその時霧は輝きて入りぬ(Dann, Nebel-loh-guckten)――の一文があったのだ。つまり、その際の混淆された印象が丁抹国旗という、相似した失語になって現われたのだよ。そうすると支倉君、あの四句に分れていた伸子の言葉の中で、鐘鳴室と武具室と――こう二つの印象だけが、奇妙にも、真中に挾まれている。となると……」と言葉を切って、その驚くべき心理分析に、法水は、最後の結論を与えた。

「すると当然、その首尾にある黄と紅――。その二つからうけた感覚が、最初のダンネベルグ事件と、終りの礼拝堂の場面でなければならないだろう。そうして、最後の紅が、絢爛たる宮廷楽師の朱色の衣裳だとすれば、何故最初のダンネベルグ事件から、伸子は、黄という感覚をうけたのだろうか」