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Classici giapponesi con furigana

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こころ

こころ

夏目 漱石

Leggi こころ di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.915 caratteri · 322 schermate

Aozora Bunko

五

五

父の元気は次第に衰えて行った。私を驚かせたハンケチ付きの古い麦藁帽子が自然と閑却されるようになった。私は黒い煤けた棚の上に載っているその帽子を眺めるたびに、父に対して気の毒な思いをした。父が以前のように、軽々と動く間は、もう少し慎んでくれたらと心配した。父が凝と坐り込むようになると、やはり元の方が達者だったのだという気が起った。私は父の健康についてよく母と話し合った。

「まったく気のせいだよ」と母がいった。母の頭は陛下の病と父の病とを結び付けて考えていた。私にはそうばかりとも思えなかった。

「気じゃない。本当に身体が悪かないんでしょうか。どうも気分より健康の方が悪くなって行くらしい」

私はこういって、心のうちでまた遠くから相当の医者でも呼んで、一つ見せようかしらと思案した。

「今年の夏はお前も詰らなかろう。せっかく卒業したのに、お祝いもして上げる事ができず、お父さんの身体もあの通りだし。それに天子様のご病気で。――いっその事、帰るすぐにお客でも呼ぶ方が好かったんだよ」

私が帰ったのは七月の五、六日で、父や母が私の卒業を祝うために客を呼ぼうといいだしたのは、それから一週間後であった。