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Classici giapponesi con furigana

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こころ

こころ

夏目 漱石

Leggi こころ di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.915 caratteri · 322 schermate

Aozora Bunko

書斎には洋机と椅子の外に、沢山の書物が美しい背皮を並べて、硝子越に電燈の光で照らされていた。奥さんは火鉢の前に敷いた座蒲団の上へ私を坐らせて、「ちっとそこいらにある本でも読んでいて下さい」と断って出て行った。私はちょうど主人の帰りを待ち受ける客のような気がして済まなかった。私は畏まったまま烟草を飲んでいた。奥さんが茶の間で何か下女に話している声が聞こえた。書斎は茶の間の縁側を突き当って折れ曲った角にあるので、棟の位置からいうと、座敷よりもかえって掛け離れた静かさを領していた。ひとしきりで奥さんの話し声が已むと、後はしんとした。私は泥棒を待ち受けるような心持で、凝としながら気をどこかに配った。

三十分ほどすると、奥さんがまた書斎の入口へ顔を出した。「おや」といって、軽く驚いた時の眼を私に向けた。そうして客に来た人のように鹿爪らしく控えている私をおかしそうに見た。

「それじゃ窮屈でしょう」

「いえ、窮屈じゃありません」

「でも退屈でしょう」

「いいえ。泥棒が来るかと思って緊張しているから退屈でもありません」

奥さんは手に紅茶茶碗を持ったまま、笑いながらそこに立っていた。