Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

Leggi 光は影を (ひかりはかげを) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.262 caratteri · 276 schermate

Aozora Bunko

四

たくさんたべて、よく眠りたまえ。

この手紙を出して二日たつと、彼は、遠矢幸造からもらつた通訳の臨時手当を懐ろに、大船から東海道線の急行へ乗り込んだ。岐阜で大きな養蜂園を経営している、その道で名の知れた猪狩芳介という人物を訪ねるためである。

四

小萩のところへ、突然、ビン詰めの蜂蜜が小包で届いた。差出人は、岐阜市外猪狩養蜂園とあるので、彼女は首をひねつた。が、結局、京野等志の計らいで、滋養品として見舞に送らせたにちがいないと思つた。

彼女は、まる二た月、彼に会わずにいるうちに、刻々、自分の生命がすり減つて行くような不安にかられはじめた。彼の手紙は、きまつて月曜か火曜に配達された。それは、いつでも力強い言葉に満ちたものであつたが、彼女にしてみれば、そういう言葉は、それだけとしては、もう、なんの慰めにも、励ましにもならない。しよせん、彼は、望むべからざることに望みをかけているにすぎないのである。

彼が想い描いているらしい二人の生活というのは、彼女自身が、既に諦めきつている、普通の結婚、世の常の夫婦生活ではないか。彼がどんなに理解に富み、深い愛情によつて彼女を病苦から救おうと決心していても、彼女は、もう再び、妻という名で呼ばれる、ある種の重荷を負いたくない、というのが、ひたすらなる願いであつた。