Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

Leggi 光は影を (ひかりはかげを) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.262 caratteri · 276 schermate

Aozora Bunko

二

では、これでお別れいたします。どうぞ、どうぞ、大きな幸福がお兄さまをおとずれますよう、美佐はお祈りいたしております。

読み終つて、京野等志は、その手紙を握つたまゝ、つと座をたつた。悲しみとも、憤りともつかぬ感情が、胸をかきむしつた。彼は、自分が、今、誰からも見られたくないという気持で、無意識に、二人の女の前から姿を消したのである。

夜風の流れている渡り廊下へ出た。彼は、もう、泣いてもいゝと思つた。しかし、涙は喉につかえて、闇の樹立に注がれている眼は、冱えかえるばかりであつた。

妹の遺書は、取乱したところがわりにないばかりでなく、一種、ほこりをもつた女の抗議とでもいうべき語気にみちている。

その抗議は、とくに、誰に向つてというのではない。むしろ、眼に見えぬ、周囲の暴力に対してであるように思われ、彼は、すこし張り合いぬけがして、大きく溜息をついた。

二

事件はまず穏便にかたがついたと言つてよかつた。新聞も、折よく、政治季節の波にもまれ、一芸妓の厭世自殺を、半ば黙殺したかたちであつた。父の軽い反対を押しきつて、遺骨はしばらく家の仏壇におき、やがて、母、手ずからそれを抱いて、郷里の寺へ葬つた後というものは、美佐のことを、家族の誰ひとり口にしなかつた。