Classici giapponesi con furigana
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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Leggi 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.479 caratteri · 394 schermate
そっと近寄り富樫もどき、相手の肩越しにのぞきこんだ。チェッという舌打ちの音、人の気配を感じたらしい。ヒラリ振り返ったが抜き打ちだ。その早さ、その鋭さ、横なぐりに腰のつがい、ダッと払われたがきまれば、まさしく広太郎胴輪切り。
酔ってはいたが心は正気、ましてあらかじめ曲者と、用心していた広太郎、飛びしさると桜を楯、幹に全身を隠しながら、刀の鯉口ブッツリと切り、相手の様子をうかがった。
片手青眼につけたまま、左手で巻軸を巻くらしい。サラサラという紙の音。と、左手がふところへはいった。ははあ巻軸を納めたな。「これ」とはじめて声をかけた。
「見たであろう? む、どうだ?」右へ右へとジリジリ廻る。
「不運な奴だ、いかしては置かぬ」
不思議な声音、鬼気がある。かれてはいるが力がある。あざ笑うのか、威嚇するのか、どっちとも取れる声音である。とまれ一旦耳にしたら、容易に忘れられない声である。
立ち木を中に広太郎、左へ左へと逃げながら、心でつぶやいたものである。「すごいなあ、恐ろしい奴だ。人を斬ったな、幾人となく。血煙りの中を通って来た奴だ……。勝ち目はない、おれに勝ち目は」