Classici giapponesi con furigana
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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Leggi 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.479 caratteri · 394 schermate
その棹の先で何物か、グルグルグルグル廻っている。独楽か、否々、朱杯らしい。芍薬の花でも咲いているようだ。かがり火に照らされてカッと赤い。と、秋雨が降って来た。宙に渦巻いている杯から、酒が霧のように散るのである。誰が廻しているのだろう? 敏捷らしい小兵の武士が、笑いながら棹をあやつっている。秦式部が曲芸をしているのである。
「あざやか!」と一人の武士がいった。垂れ頬の佐原重兵衛である。愉快そうに見上げている。
「見事!」ともう一人の武士がいった。そうしてハタハタと拍手した。総髪の熊谷三郎兵衛である。
「武士をやめても食って行けます。式部氏芸人におなりなされ。いや全く立派なものだ」もう一人の武士がこういいながら、唇から前歯をのぞかせたが、ほかならぬ金井半兵衛である。
「拙者にしてからがそのつもりでござる」秦式部片手で棹をあやつり、両眼で杯を睨みながら、さも呑気らしくしゃべり出した。「尾羽うち枯らした浪人時代――いや、今とても浪人ではござるが、もっとミジメな浪人時代、食うに困って浅草へ出、習い覚えた皿廻し、大道芸を売りましてな、日々の生活を得てござるよ。呑気でござったよその頃はな。