Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
思い切って開けて見ると、お房はすこし沈着(おちつ)いてスヤスヤ眠っている。
翌朝(よくあさ)は殊にワルかった。子供の顔は火のように熱した。それを見ると、病の重いことを思わせる。
「母さん何処(どこ)に居るの?」とお房は探すように言った。
「此処(ここ)に居るのよ」と母は側へ寄ってお房の手に自分のを握(つか)ませた。
「そう……」とお房は母の手を握った。
「房ちゃん、見えないのかい」
と母が尋ねると、お房は点頭(うなず)いて見せた。その朝からお房は眼が見えなかった。
この子供の枕している窓の外には、根元から二つに分れた大きな椎(しい)の樹があった。それと並んで、二本の樫(かし)の樹もあった。若々しい樫の緑は髪のように日にかがやいて見え、椎の方は暗緑で、茶褐(ちゃかっ)色をも帯びていた。その青い、暗い、寂(さ)びきった、何百年経つか解らないような椎の樹蔭から、幾羽となく小鳥が飛出した。その朝まで、私達は塒(ねぐら)とは気が付かなかった。
燕(つばめ)も窓の外を通った。田舎者らしい附添の女はその方へ行って、眺めて、
「ア――燕が来た」
と何か思い出したように言った。