Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
刺繍
ふと大塚さんは眼が覚めた。
やがて夜が明ける頃だ。部屋に横たわりながら、聞くと、雨戸へ来る雨の音がする。いかにも春先の根岸辺の空を通り過ぎるような雨だ。その音で、大塚さんは起されたのだ。寝床の上で独り耳を澄まして、彼は柔かな雨の音に聞き入った。長いこと、蒲団や掻巻にくるまって曲んでいた彼の年老いた身体が、復た延び延びして来た。寝心地の好い時だ。手も、足も、だるかった。彼は臥床の上へ投出した足を更に投出したかった。土の中に籠っていた虫と同じように、彼の生命は復た眠から匍出した。
大塚さんは五十を越していた。しかしこれから若く成って行くのか、それとも老境に向っているのか、その差別のつかないような人で、気象の壮んなことは壮年に劣らなかった。頼りになる子も無く、財産を分けて遣る楽みも無く、こんな風にして死んで了うのか、そんなことを心細く考え易い年頃でありながら、何ぞというと彼は癖のように、「まだそんな耄碌はしないヨ」と言って見る方の人だった。有り余る程の精力を持った彼は、これまで散々種々なことを経営して来て、何かまだ新規に始めたいとすら思っていた。彼は臥床の上にジッとして、書生や召使の者が起出すのを待っていられなかった。