Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
三
旦那様は又た、奥様を籠の鳥のように御眺めなさる気で、奥様の独り焦る御心が解りませんのでした。何時、羽根を切られた鳥の心が籠に入れて楽しむという飼主に解りましょう。何程、世間の奥様が連添う殿方に解りましょう。――女の運はこれです。御縁とは言いながら、遠く御里を離れての旅の者も同じ御身上で、真実に同情のあるものは一人も無い。こればかりでも、女は死にます。奥様の不幸な。歓楽の香は、もう嗅いで御覧なさりたくも無いのでした。奥様は歎き疲れて、乾いた草のように萎れて了いました。思えば御無理も御座ません――活き返るような恋の雨が、そこへ清しく降りそそいで来たのですから。
丁度、秋草のさかりで、歯医者の通う路は美しゅうございました。
三
十月の二十日は銀行に十五年の大祝というのが有ました。旦那様に取ては一生のうちに忘れられない日で、彼処でも荒井様、是処でも荒井様、旦那様の御評判は光岳寺の鐘のように町々へ響渡りました。長いお功労を賛めはやす声ばかりで。
その朝は、私も早く起きて朝飯の用意をしました。台所の戸の開捨てた間から、秋の光がさしこんで、流許の手桶や亜鉛盥が輝って見える。