Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate

Aozora Bunko

お島が庭口へ下りて戸を開けた時は、広岡学士と体操教師の二人が暗い屋外から舞い込むようにやって来た。

高瀬は洋燈を上り端のところへ運んだ。馬場裏を一つ驚かしてくれようと言ったような学士等の紅い磊落な顔がその灯に映った。二人とも脚絆に草履掛という服装だ。

「これ、水でも進げナ」

と、高瀬が妻に吟附けた。

お島はやや安心して、勝手口のほうから水を持って来た。学士は身体の置き処も無いほど酔っていたが、でも平素の心を失うまいとする風で、朦朧とした眼をって、そこに居る夫婦の顔や、洋燈に映るコップの水などをよく見ようとした。

学士のコップを取ろうとする手は震えた。お島はそれを学士の方へ押しすすめた。

「どうも失礼……今日は二人で山遊びに出掛けて……酩酊……奥さん、申訳がありません……」

学士は上り框のところへ手をついて、正直な、心の好さそうな調子で、詫びるように言った。

体操の教師は磊落に笑出した。学士の肩へ手を掛けて、助けて行こうという心づかいを見せたが、その人も大分上機嫌で居た。

よろよろした足許で、復た二人は舞うように出て行った。高瀬は屋外まで洋燈を持出して、暗い道を照らして見せたが、やがて家の中へ入って見ると、余計にシーンとした夜の寂寥が残った。