Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate

Aozora Bunko

ふと、ある店頭のところで、買物している丸髷姿の婦人を見掛けた。

大塚さんは心に叫ぼうとしたほど、その婦人を見て驚いた。三年ほど前に別れた彼の妻だ。

避ける間隙も無かった。彼女は以前の夫の方を振向いた。大塚さんはハッと思って、見たような見ないような振をしながら、そのまま急ぎ足に通り過ぎたが、総身電気にでも打たれたように感じた。

「おせんさん――」

と彼女の名を口中で呼んで見て、半町ほども行ってから、振返って見た。明るい黄緑の花を垂れた柳並木を通して、電車通の向側へ渡って行く二人の女連の姿が見えた……その一人が彼女らしかった……

彼女はまだ若く見えた。その筈だ、大塚さんと結婚した時が二十で、別れた時が二十五だったから。彼女がある医者の細君に成っているということも、同じ東京の中に住んでいるということも、大塚さんは耳にしていた。しかし別れて三年ほどの間よくも分らなかった彼女の消息が、その時、閃くように彼の頭脳の中へ入って来た。流行の薄色の肩掛などを纏い着けた彼女の姿を一目見たばかりで、どういう人と暮しているか、どういう家を持っているか、そんなことが絶間もなく想像された。