Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
大塚さんは彼女を放擲して関わずに置いた日のことを考えた。あらゆる夫婦らしい親密も快楽も行って了ったことを考えた。おせんは編物ばかりでなく、手工に関したことは何でも好きな女で、刺繍なぞも好くしたが、終にはそんな細い仕事にまぎれてこの部屋で日を送っていたことを考えた。
悲しい幕が開けて行った。大塚さんはその刺繍台の側に、許し難い、若い二人を見つけた。尤も、親しげに言葉の取換される様子を見たというまでで、以前家に置いてあった書生が彼女の部屋へ出入したからと言って、咎めようも無かったが……疑えば疑えなくもないようなことは数々あった……彼は鋭い刃物の先で、妻の白い胸を切開いて見たいと思った程、烈しい嫉妬で震えるように成って行った。
そこまで考え続けると、おせんのことばかりでなく、大塚さんは自分自身が前よりはハッキリと見えて来た。そういう悲しい幕の方へ彼女を追い遣ったのは、誰か。よしんばおせんは、彼女が自分で弁解したように、罪の無いものにもせよ――冷やかに放擲して置くような夫よりは、意気地は無くとも親切な若者を悦んだであろう。それを悦ばせるようにしたものは、誰か。