Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate

Aozora Bunko

やがて、思いついたように馬の傍へ馳寄(かけよ)って、力任せに手綱を引手繰(ひったく)りましたんです。

「こんな目に逢ったのも汝(うぬ)のお蔭だ」

凡夫の悲しさ、源はその日のことを馬の過失(せい)にして、さんざんに当り散した。丁度、罪人を撻(むちう)つ獄卒のように、残酷な性質を顕したのです。馬に何の罪があろう。しかし畜生ながらに賢いもので、その日の失敗(しくじり)を口惜(くちお)しく思うものと見え、ただ悄々(しおしお)として、首を垂れておりました。二重※(ふたえまぶち)の大な眼は紫色に潤んで来る。幽(かすか)に泄(もら)す声は深い歎息(ためいき)のようにも聞える。人間の苦痛(くるしみ)ですら知られずに済む世の中に、誰が畜生の苦痛を思いやろう。生活(いき)て、労苦(はたら)いて、鞭撻(むちう)たれる――それが畜生の運なんです。馬は不平な主人の後に随(つ)いて、とぼとぼと馬小屋の方へ帰って行きました。好な飼料(かいば)をあてがわれても、大麦の香を嗅(か)いで見たばかりで、口をつけようとはしませんでした。

むしゃくしゃ腹で馬小屋を出まして、源は物置伝いに裏庭へ廻って見ますと、家には誰も居りません。