Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
小諸が盛んになるも、衰えるも、私の遣方一つにあるのだ。その私が事業の記念だと言って、爰へこうして並べて、お前に見て喜んで貰おうとしているのに……アハハハハハハ」
と、旦那様は熱い涙を手に持った黄金の御盃へ落しました。
やがて、御盃や御羽織を掻浚うようになすって、旦那様は御部屋から御座敷の方へいらっしゃる。御様子がどうも尋常ではないと、私も御後から随いて行って見ました。もうもう堪えきれないという御様子で、突然、奉書を鷲掴みにして、寸断々々に引裂いて了いました。啜泣の涙は男らしい御顔を流れましたのです。御一人で小諸を負って御立ちなさる程の旦那様でも、奥様の心一つを御自由に成さることは出来ません。微々な小諸の銀行を信州一と言われる位に盛大くなすった程の御腕前は有ながら、奥様の為には一生の光栄も塵埃同様に捨てて御了いなすって、人の賛めるのも羨やむのも悦しいとは思召さないのでした。これが他の殿方ででもあったら、奥様の御髪を掻廻して、黒縮緬の御羽織も裂けるかと思う位に、打擲もなさりかねない場合でしょう。並勝れて御人の好い旦那様ですから、どんな烈しい御腹立の時でも、面と向っては他にそれを言得ないのでした。