Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
しばらく二人は無言でした。
「貴方もあんまりだ」
とお隅は潤み声でいう。源は怒を帯びた鋭い調子で、
「何があんまりだよ」
「だって、あんまりじゃごわせんか。誰から聞きなすったか知りゃせんが、今更そんな件(こと)を持出して私を責めたって……」とお隅はさもさも儚(はかな)いという目付で、深い歎息(ためいき)を吐(つ)いて、「それを根に持って、貴方は私(わし)をこんなに打(ぶち)なすったのですかい」
「あたりめえよ」
お隅は顔を外向(そむ)けて、嗚咽(すすりあげ)ました。一旦愈(なお)りかかった胸の傷口が復た破れて、烈しく出血するとはこの思いです。残酷な一生の記憶(おもいで)は蛇のように蘇生(いきかえ)りました。瞑(つぶ)った目蓋(まぶた)からは、熱い涙が絶間(とめど)もなく流出(ながれだ)して、頬を伝って落ちましたのです。馬は繋がれたまま、白樺(しらはり)の根元にある笹の葉を食っていたのですが、急に首を揚げて聞耳を立てました。向の楢林(ならばやし)――山梨の農夫が秣を刈集めている官有地の方角から、牝馬の嘶(いなな)く声が聞えて来る。やがて源の馬は胴震いして、鼻をうごめかして、勇しそうに嘶きました。