Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
ネ、私は坂を歩いたもんですから、息が切れて、まあどうしたら好ろうと思っていると、貴方が赤い躑躅の枝を折って、『この花の露を吸うがいい』と仰って、私にそれを下すったでしょう」
「あの時は又た能く歩きましたなあ。貴方も草臥、私も草臥、二人で岡の上から眺めていると、遠く夕日が沈んで行くにつれて空の色がいろいろに変りましたッけ。水蒸気の多い夕暮でしたよ。あんな美しい日没は二度と見たことが有ません、――今だに私は忘れないんです」
「あら、私だっても……」
御二人は目と目を見合せて、昔の美しい夢が今一度眼前を活きて通るような御様子をなさいました。奥様は茶呑茶椀を取上げて、
「さ、も一つ召上りませんか」
「沢山」
「そう、そんなら私頂きましょう」
「え、召上るんですか。――然し、もう御廃しなさいよ」
「何故、私が酔ってはいけませんの」
「貴方のは無理な御酒なんだから」
「それじゃ未だ私の心を真実に御存ないのですわ。私はこうして酔って死ねば、それが何よりの本望ですもの」
無理やりに葡萄酒の罎を握ませて、男の手の上に御自分の手を持添えながら、茶呑茶椀へ注ごうとなさいました。御二人の手はぶるぶると戦えて、酒は胡燵掛の上に溢れましたのです。