Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
と言って、銅貨を三つ置いて行きました。
その日は奥様も思い沈んで身の行末を案じるような御様子。すこし上気せて、鼻血を御出しなさいました。御気分が悪いと仰って、早く御休みになりましたが、その晩のように寝苦しかったことも、夢見の悪かったことも、今までに無い怖しい目に御出逢なすったと、翌朝になって伺いました。落々御休みになれなかったことは、御顔色の蒼めていたのでも知れました。奥様の御話に、その晩の夢というのは、こう林檎畠のような処で旦那様が静かに御歩きなすっていらっしゃると、密と影のように御傍へ寄った者があって、何か耳語をして申上げたそうです。すると、旦那様は大した御立腹で、掴掛かるような勢で奥様を追廻したというんです。奥様は二度も三度も捕りそうにして、終には御召物まで脱捨てて、裸体になって御逃げなすったんだそうです。いよいよ林檎畠の隅へ追い詰められて、樹と樹との間へ御身体が挟って了って、もう絶体絶命という時に御目が覚めて見れば――寝汗は御かきなさる、枕紙は濡れる、御寝衣はまるで雫になっておったということでした。一体、奥様は私共の夜のようじゃ無い、一寸した仮寝にも直ぐ夢を御覧なさる位ですから、それは夢の多い睡眠に長い冬の夜を御明しなさるので、朝になっても又た克くそれを忘れないで御話しなさるのです。