Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
大久保全村が私には大きな花園のような思をさせた。激しい気候を相手にする山の上の農夫に比べると、この空の明るい、土地の平坦(たいら)な、柔い雨の降るところで働くことの出来る人々は、ある一種の園丁(にわづくり)のように私の眼に映った。角筈に住む水彩画家の風景画に私は到る処で出逢った。
「房ちゃん、いらッしゃい――懐古園へ花採りに行きましょう」
と、ある日お菊は姉のお房を呼んで、二人して私の行く方へ随(つ)いて来た。
私は子供を連れて、ある細道を養鶏所の裏手の方へ取って、道々草花などを摘んでくれながら歩いた。お房の方は手に一ぱい草をためて、「随分だわ」だの、「花ちゃん、よくッてよ」だのと、そこに居りもしない娘の名を呼んで見て、しきりに会話の稽古(けいこ)をしたり、あるいはお菊と一緒に成って好きな手毬歌(てまりうた)などを歌いながら歩いて行った。
行っても、行っても、お菊の思うような小諸の古い城跡へは出なかった。桑畠のかわりには、植木苗の畠がある。黒ずんだ松林のかわりには、明るい雑木の林がある。そのうちに、木と木の間が光って、高い青空は夕映(ゆうばえ)の色に耀(かがや)き始めた。