Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
黒も逃げおおせた。犬殺しが手を振って、空車を引いて行った翌々日あたりから、復た私の家の床下では、毎晩この犬のゴソゴソ寝に来る音を聞くように成った。
私の仕事が世に出る頃、種夫は新宿の医者に掛かった。この大久保で生れた児はとかく弱かった。ある日、家内が種夫を負(おぶ)って、薬を貰いに出掛けようとすると、それをお菊が、見送ると言いながら、植木屋の横手にある小径を通って、畑の方までも随いて行った。
「彼処(あそこ)まで送って上げましょう」
とお菊は向(むこう)に光る新しい家屋を指して見せて、やがて母と一緒に畑の尽きたところへ出た。新開地らしい道路がそこにあった。
「菊ちゃんここから独りで帰れるの?」
と母が立留って言った。
お菊は独りで帰れると言って、桐の若木がところどころに立っている畑の間を帰りかけた。
「母さん」
こうお菊は振向いて呼んだ。そして母と顔を見合せて微笑(ほほえ)んだ。母は乳呑児を負(おぶ)ったまま佇立(たたず)んでいた。お菊は復た麦だの薩摩芋(さつまいも)だのの作ってある平坦(たいら)な耕地の間を帰ったが、二度も三度も振向いて見た。
「母さん」