Classici giapponesi con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
「わたくしが申すのではありません、大村城下の人たちがそういうのです。子供たちは妹にどろを投げつけます、お兄さま! 帰ってみんなに裏切者でない証拠をみせてやってくださいまし」
「――いやだ、帰る必要はない」
「なぜですの、どうしてお帰りになりませんの、母さまや千浪やわたくしが、犬のように大村からおわれてもいいのですか」
伝四郎はぐっと妹の手をつかんだ。それは他人同志のようなえんりょないつかみかたであった。若菜はふりはなそうとして、そのいたさに思わずあっと声をあげた。
「お兄さま!」
「さわぐな、いま思いついたがおまえはいい時にきてくれた」
「――?」
「おれは人質が欲しかったのだ」
伝四郎は唇だけで笑った。
「おれはまだほんとうに赤沢軍に信用されているわけではない、おれはどうしてもここでみんなにおれの心を信じてもらわなくてはならないのだ。どうしても、五十人や百人の足軽頭になるつもりでここへきたわけではないからな」
「それは……どういういみですの?」
「おれは出世をするんだ、一方の旗頭になるんだ」
「――お兄さま!」
「こっちへ来い、さわぐといたいめにあうぞ」
若菜はふるえあがった。