Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate

Aozora Bunko

――ああいけない。

思わずおゆきが心に叫ぶ、

「えいッ、とう!」

絶叫が起って、追手の一人が体ごと叩きつけるように斬込んだ。若い武士は危くかわしたが、体をひねった刹那、右足を断崖から踏外したので、あっ! と声をあげながら、毬のように谷底へ――。

おゆきははっと両の袖で面を蔽ったが、一時に体中の力がぬけてよろよろとよろめいた、――もしそのとき走り出て来た久右衛門が支えてやらなかったら、おゆきは気絶して倒れたに違いない。

「おゆき! 入れというのがわからぬか」

「……父さま」

「しっかりせい、家へ入るのだ」

久右衛門がおゆきをかかえるようにして家の中へ入ろうとすると、馬上の武士二人と、追手の者二人が足早に近寄って来て、

「待て待て、その娘待て」

と呼止めた。――おゆきはふり返って、父の手から静かに身を放しながら、

「……はい」と臆したふうもなく相手を見た。

「いま谷底へ落ちた若者が、ここへ立寄って何か預けたそうだな、その品を出せ」

「なんでございますか」

おゆきは色もかえずにいった。

「いまのお侍さまはたしかにお寄りになりましたけれど、湯沢へ行く道をおたずねなさいましたばかりで、べつになにもお預かりしたようなものは」