Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

雪の波止場

一

お吉ッつぁんがいれば、抛りだして行きたかったが、泣きぬくので、離せもしないのである。

「恐いこたあねえよ、あの小母ちゃんの呶鳴るのは、病気だよ、すぐ癒るよ、さあさあ、だまんな。……もいちど、高い高いばーか。……そうら、高い高い高い、ばあ!」

雪の波止場

一

関門屯所の営倉の中に、手錠をかけられたまま、露八は、ゆうべの夜半から抛り込まれていた。

(一体、何の罪科で? ――)

どうしても、それが、解せないのである。

それを考えつめたので、頭は充血しているし、顔は腫れぼったい。営倉の空から、一晩じゅう、海峡の冷たい風が、針をもつように、吹き落ちてくる。

でも、夜明けの光を見ると、露八は、今に調べがあるだろうと、一縷の心持ちを張っていた。手錠のかかった手は、知覚がなく、無花果色に膨れていた。

釣竿みたいな物の先に、稗米の握飯に梅干の入ったのを一つ、竹の皮にくるんで誰か窓から吊り下げてくれた。

指はきくので受けとって、ぼそぼそと食べた。

外を、時々、隊士の跫音がして過ぎる。

そのたびに、露八は、

「もしっ、もしっ」

背伸びをして、どなったが、うんとも、すんとも、返辞はないのである。