Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

三

江藤新平だの、西郷隆盛だのの犠牲は、そうした新政府の終了工作であった。

きのうまで、攘夷を口にし、開港論者を国賊と罵っていた志士たちが、きょうは、金モールの戎服に、二頭立ての馬車を駆り、文明開化の風をきって、議事堂の帰りを、築地ホテル館へ廻り、ホテル館のくずれは、新柳二橋(新橋と柳橋)の紅燈を必ずさわがして夜を徹した。

「どっちを向いても、わからねえや。俺の頭の磁石が狂ったのか」

露八は、ちょっと、東京をのぞきに行ったが、すぐ静岡へ舞いもどって、百姓納屋に、障子をはめたような一軒家を借り、

家伝名灸・乾坤堂

と、板看板をかけていた。

三

「師匠、ここかえ?」

「なんでも、町端れで、桃の樹があるっていいましたぜ」

「じゃあ、ここでしょう、白桃と、緋桃が、家の横に、咲いてるもの。……ちょっと、聞いてごらん」

「畏まってそうろう」

「ふざけないでさ」

「あい、あい」

吉原の幇間で、桜川何とかいう男だった。乾坤堂が読めないらしい。障子の穴からのぞいて、

「ごめん」

「誰だい」

露八は、自分の脚の三里へ、灸をすえていた。

「お宅で、灸を下ろしますか」

「あ、お上がりよ」

「てめえじゃございませんが、何でも、癆咳にはひどく利くという噂なんで、ごひいき先のお嬢様が、病気にかえられないから、すえてほしいというんですが……。