Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

人斬り健吉

一

大男の庄次郎が、水引がけの竹刀をかついで、泣きたそうに、腰を押されて行く態は、奇観だった。

すると、

「もし、土肥さん」

長屋門の窓から、渋沢栄一が、顔を見せて呼びとめた。

「あ、渋沢氏」

「だいぶ、お困りらしいの」

「弱った。とめてくれ」

「とまるものですか、酒飲みが、飲もうと思い立った時は、剣法の打ちこみと、同じですよ。それに、古参の方が多勢では――」

「父がやかまし屋で」

「藩邸へ、見えられたとき、私から謝ってあげます。お持ち合せがないようだが、これに少しばかりありますから、まあ、今日は、交際ってあげなさい。お父上も、同門の交際いまで、いかんとはおっしゃりますまい」

武士のもつ紙入れとはちがって、うす穢い財布だった。窓から、庄次郎の手に、ぽんと、落としてくれたのである。

人斬り健吉

一

しがらき茶屋の奥に、庄次郎を入れて七、八名が、衝立で席を割って、飲みはじめた。

汐留川が前だった。

店頭は、広土間で、旅帰りを出迎えている人々や、板新道の芸妓と、八丁堀の与力が、公然と出会いをしているのや、駕かきや、馬の尻が、中仕切の簀戸から透いてみえる。

夕方の、むし暑い風が、せまい銀座横町の馬糞いろの埃と、蠅とを、塀ごしに運んできて、そら豆の色が青いほか、ちゃぶ台の上は、白っぽくなった。