Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

六

頭だけは坊主でも、肚には禅も念仏も出来ていないのである。児どもが泣くように、しゃくっと、しゃくりあげて、

「弟。……貴様だけは、親父のそばにいてやるかと思ったら……」

道が暗い。

庄次郎は、何度も、蹴つまずいた。やがて町の灯が見えると、彼は、袷の襟を、頭まで、すっぽりと被って、雨も降らないのに、下を見て、駈けて行った。

六

「わしは、どうすればよいのだ……」

上水の流れが、橋の脚を洗っている。土肥半蔵は二本の腕を欄干に垂れて、死にそうな顔をしていた。

並んでいる鉄之丞の手には、消えた提灯が二人の顔のように、暗いものになっていた。

「これが、世の中じゃよ」

苦労人の鉄之丞は、何事も、こういう観念で自分だけを得心させていた。

「これが……これが世の中としたら……何のために人間は、子を育てるのじゃ。……わしだけじゃよ、こんな不運は」

「いや、そうでない。世間は、こうしたものじゃよ。もっとも、世の中にも、いろいろな推移はある。徳川様ご入府時代の世の中、寛永尚武の世の中、元禄の淫逸、田沼の作った悪政と賄賂の世の中、また、文化文政の全盛も世の中なら、天保の飢饉も、ある間の世の中じゃった」