Classici giapponesi con furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate
「では、今日にも、頂戴して参れ」
「はい」
間もなく、半蔵は出仕の時刻であり、鉄之丞も、親類へ廻るといって、二人とも出ていった。
重助が、その後で、
「若旦那、味噌汁が冷めましたが」
「飯はいらん」
土肥庄次郎は、また、自分の部屋に吊りッ放しの蚊帳の中へ入ってしまった。
腕を拱む。
いかにも、腐ったという恰好である。
「あんなッて、はずはない。あんなってはずは……」
ゆうべの失敗を思うと、涙が出そうだった。半生の信念に、大きな動揺をうけての溜息だった。叔父の前では、我慢していたが、じつはまだ、ゆうべ、したたかに投げつけられたときの腰の挫骨が、ずきずきと火てッて、ひどく痛い。
不思議でならないのだ。どうして、あんなぶざまに投げられたろう。十三年間の道場通いを考えると、口惜しいよりは、情けない。しかも昨日は、師から免許皆伝の目録を授けられたばかりの帰りだ。
「何をして来たのか、十年の余も――」
考えざるを得なかった。それだけの歳月を、寒稽古の、土用試合のと、竹刀でぽかぽか撲られた上、一ツ橋から小石川の果てまで、往復の足数だけでも、何千里歩いたことになるか、容易な根気で貰った免許皆伝ではない。