Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

「土肥」

と、呼びとめた。

どこの道場にもいる万年門弟という悪摺れのした連中が、

「おめでとう」

「やあ」

庄次郎は、水引のかかっている竹刀と一緒にお辞儀をした。

「欣しかろうな」

「それは……」

「どこへ行っても、もう一流の剣客でとおるぞ」

「まだ、まだ」

「いや、貴公のその頑丈な体と、皆伝の腕なら、千葉や、九段の斎藤へ行っても、退けはとるまい。めでたい。――しかし土肥、奢らにゃいかんぜ」

五、六人が取り巻いて、

「おごれ、おい、奢れよ」

「飲もう」

「祝杯だ」

庄次郎は、あわてて、友達の引っぱる袂をもぎ離した。

「待ってくれ」

「いいじゃないか」

「俺は、酒は、飲まんでな」

「飲むのは、吾々がひきうける。どこへ行こう」

一人が、云った。

「吉原」

「吉原はいかん」

と打ち消して、

「しがらき」

同音になって、

「よかろう。金六町のしがらきまで交際えよ」

庄次郎は、当惑そうに、ため息をついた。持ちあわせの小遣いもなし、厳格で、質素な家庭に育ったので、酒は、辛いものとしか、味を知らなかった。

「今日は、勘弁してくれたまえ」

「今日はって、ほかに、何日、交際ったことがあるか。今日は来い」