Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

三

しきりと、会いたくなった。

三

読みかけていた横文字の書物をふせて、

「ちッ。またやっているな」

八十三郎は、窓から首を出した。

庭にいた庄次郎が、

「何だ? 弟」

「実に、癇にさわる。近頃は、毎日ですからな」

「何が」

「あの軍鶏の声です」

「軍鶏か、あの声は」

「まるで、喉を締めるような。……あれが聞こえ出すと、勉強ができない」

「どこの家で、あんなものを、飼っているのか」

「飼っているならいいが、そうじゃない。この上の藪の中に、無頼漢と、闘鶏師が集まって、博奕をしているのです」

「ふふむ、蹴合いか」

「賄賂を取っているとみえ、町方の役人も、耳のない顔をしている。上も下も、怪しからん世の中だ」

なるほど、そう聞いてみると、かなり耳につく。

風態の悪いのが、風呂敷をかぶせた、軍鶏を抱いて、だらだら坂を、往来している姿も、よく見かける。

四、五日後だった。

「兄上、渋沢栄一殿が、訪ねて来ました」

「何日?」

「只今、お玄関に」

「えっ、来たのか。いると云ったのか」

「べつに、はっきりは、申しませんが」

「いないと云ってくれ」

「なぜです。なかなかいい人物じゃありませんか。ご不在中、幾度も来て、拙者と、話して行ったこともあるが、しっかりしている」