Classici giapponesi con furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate
痘痕志士
一
「えっ?」
疑う眼を、渋沢は、笑って、その背をどやすように、叩いた。
「上がりたまえ。まあ、上がりたまえ!」
痘痕志士
一
「そう、恐縮されては、自分も困る。まず一献」
と、渋沢は、くだけて、
「今も申した通り、金子は、差し上げたつもり、ご返却などしていただこうとは思ってもおらぬが、後で気づくと、あの金入れの中には、他人に見られてはちと都合の悪い書付二、三通と、自分の印形も入っている。それだけを、実は、お返し願いたいものと思い、しばしばお住居にまでお訪ねした次第ですが」
「いや、何とも、はや」
庄次郎は、赤面しながら、頭を掻いた。
「ここで、お目にかかったのは何よりだ。あの書付と印形だけを、お戻し下さらんか」
「もとより、お返し申さねばならないが……実は、その……」
「どうなされたか」
「ただ今、ここには、持っておりませんので」
窮したあまり彼は一時遁れを云ってしまった。ほんとは、お蔦が、金ぐるみ持って出て、いまだに帰って来ないのであったが、堅人の渋沢栄一に、そんな女の話はしにくいし、またあまり無責任のようで、書付や印形まで紛失したとは云えなかった。
「四、五日うちに、必ず、私の方からお届けしますが」