Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

三

沢村田之助の幟を見ると、庄次郎は、

(畜生め)

お蔦へともなく、田之助へともなく、肚のなかで、呪うように、呟いた。

三

神田橋近くへ来ると、番屋からも手を借り、十四、五名になった捕手を、石垣の裾だの、樹蔭だの、橋の袂だのへ配って、

「じゃあ、あの長屋門から出て来るな」

と、小倉庵は、念を押した。庄次郎は、うなずいて、藩邸の門を入って行った。ここの様子は知りぬいている彼だった。

公用人の平岡円四郎の家の裏口へそっと廻って、

「渋沢氏――」

垣越しに呼ぶと、

「やあ、土肥君か」

書斎の窓が開いた。

「よろしいか」

「その木戸を押したまえ」

庄次郎が、入ってゆくと、渋沢は縁の障子を開けて、敷物を出した。

「約束をたがえず、わざわざ、お届けを願って恐縮じゃな」

「ところが……実は……その書付はまだ持参して来なかった」

「えっ? まだ?」

渋沢は疑った。

庄次郎は苦しそうに、頭の毛の根を、もじもじと掻いた。そして、自分の情婦の手に預けて、紛失してしまったことを白状すると、渋沢は、案外こだわらなかった。

「ははは、紛失してしまった物ならしかたのない話、なぜ先日、そう云わなかったのだ」