Classici giapponesi con furigana
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Leggi 狂い凧 (くるいだこ) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 111.430 caratteri · 226 schermate
んじゃないのか。そんな不安というか虚無的な気持というか、私物の整理をしていても、それが心の底に引っかかって、酒でも飲まなきゃやり切れなかったな。それで毎晩――」
「城介君がベロナールをのんだ夜ね、彼の態度や顔色に変ったことはありませんでしたか?」
「態度? 態度は同じだった。ただ顔色は二、三日前から、白っぽくむくんでいるような感じだったね。眼の下がぼったりふくらんで、頬なんかたるんでいるような気がしましたよ。粉を口に放り込む瞬間、どうせぶっこわれた体だと――」
加納は言いかけて、あと口をつぐんだ。黒い陶器の瓶をことことと振った。その振り具合では、ほとんど残り少なになっているらしい。加納はそれを自分の湯呑みに注いだ。私はその情景をぼんやりと想像しながら言った。
「しかしそれが、自殺するほどのことかなあ」
「そうだね。帰還のために部隊を離れると、もう薬は入手出来ない。途中で禁忌症状が出れば、自分だけ途中下車して、病院に強制入院させられるでしょう。万一家に帰りついても、内地じゃ薬は自由にならないからね。いや、あの年頃の考え方というのは、今の齢になっては理解出来ないようなところがあるね」