Classici giapponesi con furigana
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Leggi 狂い凧 (くるいだこ) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 111.430 caratteri · 226 schermate
九
爪だけは生きていて、伸びるわけです」
「爪が生きているのかねえ」
「自分らも衛生兵になって、軍医なんかに聞いてみたんですが、そんな筈はないと言う。しかしわたしたちは見たんですよ。たしかに爪が伸びていた」
「あちらでは上流の夫人は、わざと爪を伸ばすという話だが――」
「上流の女なら、ちゃんと棺に入れて埋める。野犬が掘り出すわけはない」
加納は力をこめて言った。
「わたしはそれを思い出す度に、しんしんと体がどこかに沈み込んで行くような感じがするね。人間というものは、とにかく独りぼっちというような――」
九
その頃父親の福次郎は、脳出血のため、自宅で倒れた。夕方風呂から上って、夕刊を読んでいる中、
「少し眼まいがするから、床をとって呉れ」
と立ち上った瞬間、よろめいて畳にくずれ落ちた。すぐ医者を呼んだが、もう半身がきかなくなっていた。栄介は電報で東京から呼び戻された。福次郎は昏睡の状態にあった。
医師の言では、急になおる病気ではないし、また悪化の徴候もない。気長に安静を保つだけだとのことで、四、五日いただけで、また上京した。その間に、城介に知らせるべきや否やで、栄介と幸太郎は対立した。