Classici giapponesi con furigana
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みちくさ
道草
Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate
六十四
そうして何時の間にか離れ離れになった人間の心と心は、今更取り返しの付かないものだから、諦らめるより外に仕方がないという風にふるまった。彼は玄関に立って、御常の帰って行く後姿を見送った。
「もしあの憐な御婆さんが善人であったなら、私は泣く事が出来たろう。泣けないまでも、相手の心をもっと満足させる事が出来たろう。零落した昔しの養い親を引き取って死水を取って遣る事も出来たろう」
黙ってこう考えた健三の腹の中は誰も知る者がなかった。
六十四
「とうとう遣って来たのね、御婆さんも。今までは御爺さんだけだったのが、御爺さんと御婆さんと二人になったのね。これからは二人に祟られるんですよ、貴夫は」
細君の言葉は珍らしく乾燥いでいた。笑談とも付かず、冷評とも付かないその態度が、感想に沈んだ健三の気分を不快に刺戟した。彼は何とも答えなかった。
「またあの事をいったでしょう」
細君は同じ調子で健三に訊いた。
「あの事た何だい」
「貴夫が小さいうち寐小便をして、あの御婆さんを困らしたって事よ」
健三は苦笑さえしなかった。
けれども彼の腹の中には、御常が何故それをいわなかったかの疑問が既に横わっていた。