Classici giapponesi con furigana
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みちくさ
道草
Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate
八十五
「大変荒れた事、今年は例より寒いようね」
「血が少なくなったせいで、そう思うんだろう」
「そうでしょうかしら」
細君は始めて気が付いたように、両手を火鉢の上に翳して、自分の爪の色を見た。
「鏡を見たら顔の色でも分りそうなものだのにね」
「ええ、そりゃ分ってますわ」
彼女は再び火の上に差し延べた手を返して蒼白い頬を二、三度撫でた。
「しかし寒い事も寒いんでしょう、今年は」
健三には自分の説明を聴かない細君が可笑しく見えた。
「そりゃ冬だから寒いに極まっているさ」
細君を笑う健三はまた人よりも一倍寒がる男であった。ことに近頃の冬は彼の身体に厳しく中った。彼はやむをえず書斎に炬燵を入れて、両膝から腰のあたりに浸み込む冷を防いだ。神経衰弱の結果こう感ずるのかも知れないとさえ思わなかった彼は、自分に対する注意の足りない点において、細君と異る所がなかった。
毎朝夫を送り出してから髪に櫛を入れる細君の手には、長い髪の毛が何本となく残った。彼女は梳くたびに櫛の歯に絡まるその抜毛を残り惜気に眺めた。それが彼女には失なわれた血潮よりもかえって大切らしく見えた。
「新らしく生きたものを拵え上げた自分は、その償いとして衰えて行かなければならない」