Classici giapponesi con furigana
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みちくさ
道草
Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate
彼はまたぴかぴかする一匹の伊勢崎銘仙を買うのに十円余りを費やした。友達から受取った原稿料がこう形を変えたあとに、手垢の付いた五円札がたった一枚残ったのである。
「実はまだ買いたいものがあるんだがな」
「何を御買いになるつもりだったの」
健三は細君の前に特別な品物の名前を挙げる事が出来なかった。
「沢山あるんだ」
慾に際限のない彼の言葉は簡単であった。夫と懸け離れた好尚を有っている細君は、それ以上追窮する面倒を省いた代りに、外の質問を彼に掛けた。
「あの御婆さんは御姉さんなんぞよりよっぽど落ち付いているのね。あれじゃ島田って人と宅で落ち合っても、そう喧嘩もしないでしょう」
「落ち合わないからまだ仕合せなんだ。二人が一所の座敷で顔を見合せでもして見るがいい、それこそ堪らないや。一人ずつ相手にしているんでさえ沢山な所へ持って来て」
「今でもやっぱり喧嘩が始まるでしょうか」
「喧嘩はとにかく、己の方が厭じゃないか」
「二人ともまだ知らないようね。片っ方が宅へ来る事を」
「どうだか」
島田はかつて御常の事を口にしなかった。御常も健三の予期に反して、島田については何にも語らなかった。