Classici giapponesi con furigana
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みちくさ
道草
Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate
彼の顔には何らの特徴もなかった。強いていえば、今日までただ世帯染みて生きて来たという位のものであった。
「どうも分りませんね」
彼は勝ち誇った人のように笑った。
「そうでしょう。もう忘れても好い時分ですから」
彼は区切を置いてまた附け加えた。
「しかし私ゃこれでも貴方の坊ちゃん坊ちゃんていわれた昔をまだ覚えていますよ」
「そうですか」
健三は素ッ気ない挨拶をしたなり、その人の顔を凝と見守った。
「どうしても思い出せませんかね。じゃ御話ししましょう。私ゃ昔し島田さんが扱所を遣っていなすった頃、あすこに勤めていたものです。ほら貴方が悪戯をして、小刀で指を切って、大騒ぎをした事があるでしょう。あの小刀は私の硯箱の中にあったんでさあ。あの時金盥に水を取って、貴方の指を冷したのも私ですぜ」
健三の頭にはそうした事実が明らかにまだ保存されていた。しかし今自分の前に坐っている人のその時の姿などは夢にも憶い出せなかった。
「その縁故で今度また私が頼まれて、島田さんのために上ったような訳合なんです」
彼は直本題に入った。そうして健三の予期していた通り金の請求をし始めた。
「もう再び御宅へは伺わないといってますから」