Classici giapponesi con furigana
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みちくさ
道草
Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate
御住という名前さえ呼ばなかった。
彼はふと眼を転じて、あらわな白い腕の傍に放り出された一束の書物に気を付けた。それは普通の手紙の重なり合ったものでもなければ、また新らしい印刷物を一纏に括ったものとも見えなかった。惣体が茶色がかって既に多少の時代を帯びている上に、古風なかんじん撚で丁寧な結び目がしてあった。その書ものの一端は、殆んど細君の頭の下に敷かれていると思われる位、彼女の黒い髪で、健三の目を遮ぎっていた。
彼はわざわざそれを引き出して見る気にもならずに、また眼を蒼白い細君の額の上に注いだ。彼女の頬は滑り落ちるようにこけていた。
「まあ御痩せなすった事」
久しぶりに彼女を訪問した親族のある女は、近頃の彼女の顔を見て驚ろいたように、こんな評を加えた事があった。その時健三は何故だかこの細君を痩せさせた凡ての源因が自分一人にあるような心持がした。
彼は書斎に入った。
三十分も経ったと思う頃、門口を開ける音がして、二人の子供が外から帰って来た。坐っている健三の耳には、彼らと子守との問答が手に取るように聞こえた。子供はやがて馳け込むように奥へ入った。其所ではまた細君が蒼蠅いといって、彼らを叱る声がした。