Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

Leggi 光は影を (ひかりはかげを) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.262 caratteri · 276 schermate

Aozora Bunko

やつと、弟の寝ている隣りへ、どさりとあぐらをかいた。もう彼の床も敷かれてあつた。

「ずいぶんはいつたらしいじやないの。あんた、そんなにいけるのかい?」

と、母は、息子のこんなに酔つたざまを見るのははじめてなので、意外なような、頼母しいような訊きかたをした。

「なに、そんなに飲みやしませんよ。あのバイロンが懐しがつて、いつまでも放さないもんだから……。すみません、水をいつぱい……」

母の顔をみると酔いが急にさめた。水をコップに汲んで持つて来た母に、彼はぴよこんと頚をさげ、ひと息にそれを飲んだ。

「もう一杯かい?」

「いゝえ、もうたくさん」

「おなかすいてやしない?」

「そうだなあ、なんか、ありますか」

「ご飯はあるんだけど、お茶漬けでもどう?」

「いゝですとも……下へ行きましよう」

「持つて来てあげるよ」

「いえ、下へ行きます。用意しといてください。すぐ行きますから……」

母が降りて行くと、彼は、そこへごろりと横になつた。

弟の深志は、なにも知らずに眠つている様子であつた。

旧友南条己未男は、七年前と少しも変つていない、と、彼は思つた。多少の変化が認められるとすれば、昔のバイロンよりも人間の幅ができ、それだけ世間を見る眼が広くなつているようであつた。